最近、なにかと話題の民法900条4号の非嫡出子問題。よく考えたら、判例だけ覚えていてどうしてそうなったのかきちんと理解していない。ってことで、グーグル先生にお世話になりながらまとめてみた。
まずは判例から。
最(大)決平成7年7月5日
本件規定の立法理由は、法律上の配偶者との間に出生した嫡出子の立場を尊重するとともに、他方、被相続人の子である非嫡出子の立場にも配慮して、非嫡出子に嫡出子の二分の一の法定相続分を認めることにより、非嫡出子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものと解される。
って、ここで疑問が。そもそもどうして法律婚を尊重してるの?
ぐぐってみたところ、歴史的経緯からきてるようで、一夫一婦制の強調らしい。
じゃあ、どうして一夫一婦制が強調されてたかという話になるわけだけれど…
・生物学的な観点:どうやら一夫多妻制だと種が滅んでしまうらしい?
-> 日本は長い間一夫多妻制だったよね?(多数だったかといわれると微妙だけど)
ってことなのでヒトとしては考慮しなくてよいかも?
・歴史的な経緯:もともと日本は一夫多妻制 -> 「家」を存続させることが目的
-> それが西洋文化の影響で一夫一婦制に
といっても、西洋でも一夫多妻制の話は昔からあったよね… (建前上、キリスト教は一夫一婦制だけど…)
つまり… 軽く調べた限りだと一夫一婦制の導入理由って「なんとなく西洋文化で流行ってたから日本も真似してみました」ってだけ?!
それがベースとなって社会システム(戸籍、社会保障制度等々)が構築された?
ってことは「なんとなく」の一夫一婦制であることが社会で否定されれば国家として法律婚を尊重する意味はなくなるってこと?
で、この否定はさらに2つのパターンに分かれる?
1.一夫多妻制(一妻多夫でもOK)万歳!
-> 1対N制を法律で認める(新しい法律婚)
-> 2番目の子も婚姻届を出していれば嫡出子として保護
事実婚は生き方として否定はしないが国として保護はしないよん
2.一夫一婦制(事実婚の子についても嫡出子扱い)
-> あくまで法律上のパートナーは一人だが、事実婚の子については特別嫡出子と同じ扱い
諸外国は2なんだろうけど理論としてはすっきりしない感がある…
かといっていきなり1は飛躍しすぎ…?w
結局のところ、現在社会がどの「程度」法律婚システムについて違和感を持っているかどうかの問題?
一夫一婦制を廃止して一夫多妻制を導入するシステム構築のコストと非嫡出子については嫡出子と区別しないシステム構築のコストという現実的な問題もあるかもなぁ。
『出生数における非嫡出子の割合』
日本は1.2%(95年) -> 日本は2.2%(11年)。フランス44.3%(02年)、ドイツ26.2%(03年)
日本だけデータが新しくて比べるにはちょっと微妙だけど、最近のデータでも日本では法律婚が定着してることがわかる。
一方で、諸外国は事実婚の割合が多いという土壌があり社会制度の見直しが必要だった可能性があって非嫡出子の区別をなくしたのかなぁ? 逆に嫡出子と非嫡出子との差異を法で撤廃したため事実婚が増えた可能性もある。なのでこのデータはフランス、ドイツの嫡出子と非嫡出子の扱いに差をなくした年の前後を比べないことには意味がないよね。
大阪高裁平成23年8月24日
平成7年決定以後、法制審議会における相続分平等化等を内容とする答申、我が国における婚姻、家族生活、親子関係における実態の変化や国民意識の多様化、市民的及び政治的権利に関する国際規定約28条1項により設置される委員会の意見、諸外国における国際的な区別撤廃の推進等、国内的、国際的な環境の変化が著しく、相続分平等化を促す事情が多く生じているといえる。なお、上記国籍法に関する最高裁判決により国籍取得に関する区別が違憲とされ、戸籍や住民票において嫡出・非嫡出を区別しない表示が採用されるようになり、児童扶養手当法施行令が改正されるなど嫡出子と非嫡出子とを区別して取り扱わないことが公的な場面において一般化しつつあるともいえる。その他、抗告人が指摘する条約の規定等をも考慮すれば、本件の相続開始時においては、法律婚を尊重するとの本件規定の立法目的と嫡出子と非嫡出子の相続分を区別することが合理的に関連するとはいえず、このような区別を放置することは、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えているというべきである。
んー、この判決はどうなんだろう…
少なくとも最高裁判決が出てから高裁判決の間に非嫡出子が増えた割合って1%なわけでこの値を持って実態の変化や国民意識の多様化があったというには横暴な気がするけど…
むろん、これは実際の値で潜在的な割合は増えてるのかもしれないけど。
でもって、戸籍、住民票、児童扶養手当法施行令の改正等で嫡出子と非嫡出子を区別しないシステムになったことをもって「立法目的と嫡出子と非嫡出子の相続分を区別することが合理的に関連するとはいえず」というのもどうかと…
説明になってない気がするんだけど。
例えば「遺言で嫡出子と非嫡出子と平等に相続するよう残す人がそれなりの数いる」とかならわざわざ法律で嫡出子と非嫡出子の相続分を区別するのはどうかと思うけど。むしろ、そういう記載を遺言で残す人が少ないから本来、法律婚の尊重で嫡出子にしか相続を認めないのをわざわざ900条4号で非嫡出子にも1/2認めさせようとさせてるんじゃないのと思ったりするんだけどねぇ
あと、諸外国との対比をしてるけど、文化、環境がそもそも違うわけで、よそがやってるから自分も~ってのを主たる理由とするのは思考停止だよねw
ってことで、結局まとめようとして疑問点が余計に増えただけに(爆
ところで、いつから婚外子って呼ばれるようになったの? 理由はわかるよ。えぇ、みんな「ちゃくしゅつし」って噛むからでしょ?(違